Nov.2012HIBIYA × garden

来年で開園110周年を迎える日比谷公園は、新しい文化の発信地として、いつの時代も洒落人たちを夢中にしてきました。
今なお幅広い世代に愛され続ける理由は、何なのか。
秋風が心地いい季節。“仕掛”の謎を紐解きながら、散策を楽しんでみませんか?

馬車が走る庭園

ここはいったい、どこだろう――。雄大な木々を見上げていると、まるで森に迷い込んだような錯覚に陥ります。北に皇居、南に新橋、東に銀座、西に霞ヶ関。言わずと知れた都心に居ながら、自分が立っている場所はどこなのかわからなくなるという、不思議。

ドイツ式庭園を参考に設計された日比谷公園は、明治36年、日本初のパブリックパークとして開園しました。フリーハンドで描かれたゆるやかなカーブの園路には、当時、上流階級者を乗せた馬車が軽やかに走っていたというから、実に、優雅。大正時代には、モボ、モガと呼ばれた、流行の先端を行くモダンボーイとモダンガールも集っていたらしく…。

つい、足を運んでしまう

洒落人たちは、まずは園内の奏楽堂で、軍楽隊による吹奏楽を鑑賞し、洋楽の世界に酔いしれたとか。その後は敷地内を散策し、花壇に咲く四季折々の洋花を愛で、締めくくりは、レストラン松本楼でカレーとコーヒーをいただく。これが、文明開化時代の、最もモダンな時間の過ごし方だったそうです。とびっきりのオシャレさんたちが、西洋文化を五感で味わいながら表情を高揚させる。そんな姿を想像していると…、ふと、この公園には“仕掛”があるのでは? という思いを、抱きました。

今も昔も変わりなく、人々がつい足を運んでしまう理由。それは、この場所を訪れると、かならず新しい何かに出会える点にあるのではないか、と。

心地よい違和感に、はまる

園内を歩いていると、そこかしこに、気になるものが点在しているのです。“心地よい違和感”とでも言えばいいでしょうか。西洋文化をいち早く発信した公園でありながら、心字池と雲形池という日本庭園風のエリアがあったり、江戸城の石垣の一部が残されていたり。和と洋の文化が、うまくミックスされている。そして、週末になると、敷地内の結婚式場でウエディングパーティーが行われ、広場では催し物が開催され…。

この歴史深い公園は、柔軟に進化を遂げてきたのでしょう。だから、訪れる人を飽きさせず、ここはどこだろうと、迷いまで抱かせる。この心憎い“仕掛”に、はまる人は多いはず。なるほど。私も、そのひとり、というわけですね。

INSIDE

実に40年前から日比谷公園などの公園管理業務に携わっている、東京都公園協会日比谷公園サービスセンターの管理係長、髙橋裕一さん。現在は、月1回発行の広報誌『日比谷公園ニュース』の企画、取材、構成、撮影、すべての作業をおひとりで担当。公園のことを隅々まで知りつくす、自他ともに認める「誰よりも日比谷公園を知る人物」に、日比谷公園の魅力を伺いました。

Q.日比谷公園のよいところって?
場所にまつわる“物語”がたくさんあります。たとえば、雲形池は、創建当時と同じ形をしていますが、戦後は埋め立てられてアメリカ軍のダンスホールになったり。その後掘り下げられるものの、今度は地下鉄丸ノ内線の工事に当たって、再び姿をなくしたり。さまざまな変遷を経て現在の形があるのです。そういう歴史の重みがありながら、ふらっと立ち寄れる点はいいですね。交通の便が非常によく、ビジネスマンやファミリーなど、幅広い世代のかたで賑わっていますから。
おすすめのスポットは?
たくさんありますが、個人的に好きなのは雲形池です。これからの季節は、池を囲むように植栽されたモミジが真っ赤に色づくのですが、この紅葉と、池のシンボルである鶴の噴水の姿が見事にマッチして、どこから見ても美しい。紅葉は11月下旬〜12月初旬が一番綺麗です。松本楼の横の、『首かけイチョウ』と呼ばれる大イチョウは11月中旬~下旬が見頃で、黄金色に輝きますよ。

editor's pick

散策中ひと息入れたくなったら、「日比谷グリーンサロン」を訪れてみては? 園内の植物を眺めながら、食事やお茶を楽しめます。また2階3階の「緑と水の市民カレッジ」では、東京の緑と水について学べる講座を受講可能。ライブラリも充実しており、公園や植物、環境、また近辺の歴史についても学べます。

日比谷グリーンサロン 「緑と水」の市民カレッジ|公園へ行こう!