Mar.2013HIBIYA × flowers

日ごとに暖かさが増し、街路樹の花々が美しく咲き誇る季節がやってきました。
この時期になると、日比谷は春の花で溢れ、それを愛でる人で賑わいます。しかし、ところで。
人はなぜ、花を愛でるのでしょうか。皇居まわりや日比谷公園を散策するうちに、ひとつの答えが、見えてきました。

花を愛でる理由

沈丁花の甘い香りが、ふんわりと漂うので、ああ仕方ない。ほんの少し立ち寄るつもりが、香りにすっかり誘惑されて、気づけば、日比谷公園の花々をゆっくりと見つめてしまっている。

紅梅は、空色とのコントラストが眩しいほど美しく、黄色に輝く菜の花は目にするだけで心弾む。そして、見るたびに表情を変える桜の花は、どうしてこんなにも、私たちの心を動かすのだろうか。

考えるのは無粋とわかっていながら、春の花を見つめるうちに、なぜ人は花を愛でるのか、その理由を知りたくなりました。

魔力に引き寄せられる

数日後、今度は友人を誘って、桜田壕を訪れました。そこで、私は新鮮な感覚を味わったのです。同じ桜を見ながら会話をするうちに、なぜでしょう。私は彼女に、自分のささやかな秘密を打ち明けていました。花を前にすることで、心の奥底にしまっていた感情が、自然と溢れてきたのです。

思えば、人は古来より、花を捧げ、贈り、詠み、描くことを重ねてきました。これは、人が花そのものに思いを託しているからでしょう。そして、託すことで人の心は熱くなり、行動を起こしたりもする。私も、この花の魔力に引き寄せられたのかもしれません。

在るだけで饒舌

花は、時として、人をおしゃべりに変えてしまいます。けれど、一方で、花さえあれば言葉はいらない。そんな場面が生まれることも。

日比谷公園内のフラワーショップ、日比谷花壇を、仕事帰りに訪れたときのことです。「結婚20周年の記念に、妻に贈りたい」と、花束をオーダーする男性を見かけました。仕上がった20本の薔薇の花束はゴージャスで、そこに在るだけで饒舌で、言葉少なに店内を立ち去る紳士とは対照的で…。

男性は、花束を渡すときもきっと、多くを語らないでしょう。なぜなら、花そのものがメッセージだから。この後の展開は、花に任せておけばいいのです。

INSIDE

ヒビヤカダン 日比谷公園店で、お客様のさまざまな声に耳を傾け、花に託して贈る気持ちをくみ取り、花贈りをお手伝いしているフラワーコーディネーター、篠原信子さん。品質にこだわる来訪者から厚い信頼を寄せられる「花のプロ」篠原さんに、花の魅力と、日比谷公園の好きな花について、話を伺いました。

Q.花と日比谷の魅力についてお聞かせ下さい。
日頃、お客様と接していて思うのは、花は単なる品物ではなく、人の気持ちをつなぐ役割を担っているものだということです。人生の節目に花を贈られるかたは多く、その貴重な瞬間にお役に立てることを心から幸せに思います。日比谷には劇場やホテルが多いので、そこを訪れる特別な日に当店にも立ち寄って下さったり、公園の一部という立地を気に入って、遠方から足を運んで下さるお客様もいらっしゃいます。また、男性が入りやすい外観の建物だからか、ビジネスマンのかたにもよくご利用いただいています。皆さん、公園の緑を眺めながらゆっくりと滞在して下さることが多いです。
Q.日比谷公園の好きな花は?
どの季節も四季折々の花が美しく咲くので、お気に入りはたくさんあります。特に好きなのは、テニスコートの近くにある、桜と菜の花がいっせいに咲くスポット。ピンクと黄色が眩しいぐらい綺麗です。また、これからの季節は、チューリップや薔薇も咲き誇るので、待ち遠しいですね。

editor's pick

ヒビヤカダン 日比谷公園店は、戦後復興計画の一環として、当時の都知事より「市民の憩いの場である公園に、海外の例に倣ってフラワーショップを」と要請を受け、1950年に出店。2009年には、60周年を記念して店舗をリニューアル。日比谷公園の自然と馴染むモダンな建築物で、2010年度グッドデザイン金賞を受賞している。

ヒビヤカダン 日比谷公園店